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「子どもの施設設計入門」

藤田 茂信

私は祖父が寺の住職をしていた因縁からか、学生時代から仏教美術に憧れ、奈良京都の神社仏閣を見て回り多くの仏像などをカメラに撮ったりスケッチをしていたことがある。 当時は建物も仏像も写真を撮らせてくれる所も多かった時代であったが、残念なことにそのスケッチとか写真は数枚を残しているのみで殆んど行方不明である。

現在、私はCADとか製図版で図面を書くことは皆無である。三角スケールと30年以上使っているシャープ ペンシルのみでスケッチをし、ボールペン・色鉛筆・サインペンでその用紙を塗りたくっている。他人が見て、何を書いているのか、何十本もの線のどれが必要 なのか不要なのかわかりにくく、殆んど判らない。スタッフに説明をするとき最後のカラーペンで初めてその概要が現れることが多いのだが、僅かな枚数の紙 に、自分にだけは何層分の平面図・何面もの立面図が書き込んであり、スタッフには気の毒なことである。 建物のプランを組むとき造形から入るときと平面から入るときがある。もちろん同時に頭の中では考えているのだが、こども・高齢者設計の場合はどちらかとい えば後者である。

こども・高齢者施設の平面から入るときの考え順・考え方などを説明します。まず考えなければならないのが 施主の思いと方針、敷地・道路・人数など与えられる条件を理解すること(決してプランの押し付けはしない)。それから法律・設置基準・動線・視線・距離・ 高さ・等々。一度考え始めると数時間は集中する。

今回は、こどもの施設を例にとって見ます。一人のこども・小集団のこども・大集団のこども・教職員(それ ぞれ男女・運転手・通勤・更衣・休憩・食事)こどもの家族(両親・兄弟・4人の祖父母)・出入りの業者(教材・給食・修繕)・年間を通じた行事(運動会・ 発表会・入園卒園式)時の人の数と動き・大人こども、男女のトイレの距離と数と視線・送り迎えの人(こどもを含む)・乗用車、給食車、消防車、救急車、ス クールバスの動線・こどもの脱走・変質者の進入・非常時の全体の動き・動物(野良猫・野良犬・小鳥・カラス)それぞれの春夏秋冬・天気(雨・台風・地震) などなど動線だけ書き込んでも何十本にもなるし、園内のゾーン設定だけでも頭の中がパニックになるほどのシュミレーションを同時に考えなければならない。 さらに風・光・音と各部屋とのつながり・大きさ・家具・教材・給食・体育なども同時に考える。それに加えて乳幼児施設の場合、家庭の延長なのか学校の前段 なのかにより上下足の考え方も変わってくる。海外の施設を似するゆえに日本家屋でありながら履物の区別が付かない計画となってどの部屋に移動するにも土足 と上足が中途半端になってしまう。幼稚園のプランで上下足計画ができるようになると一人前といわれる。

これだけ考えることが多いのが子供の施設設計である。これはどの建物にもいえることなのだが、とくにこどもの施設は大人の考えが通らないのが手ごわい原因かもしれない。 こんなに難しい設計をCADで計画するなんて信じられないと思っているのは、私が年を取ったからなのか、真剣に考えているからなのか、わからないが何せ難しいものである。